総合理工学部 須田 珠那さん(1年生)
令和5年度 グローバルチャレンジ奨学金受給者

 今回のタイチェンマイ大学サマースクールに参加して学んだことは2つある。
 1つ目に,英語のコミュニケーションツールとしての重要性である。義務教育が開始する小学生から私たちは英語に触れ,学ぶ。高校を含めて約6年間英語を学ぶにも関わらず,日本人は英語が苦手だとよく言われる。私も英語,特にスピーキングに苦手があった。しかし今回の研修を通して,日本人は英語が苦手だといわれる理由とそれに対する対処法を見つけた。タイで2週間生活をする中で様々な人に出会った。タイ人はタイ語が第一言語であり英語を全員が流暢に話せるわけではない。だが,間違っている英語だとしても失敗を恐れず,日本人の私と交流をし,理解しあうために英語を使うバディーやホテルのスタッフの方の姿からは言語は意思疎通のためにあるという本来の存在意義を改めて認識した。英語には「正しい」文法が存在し,正しく英語を話せるように学習を進める。そこにはメリットもあるが,正しさを求めるあまり気持ちを表現することが大切なコミュニケーションの場でさえも間違いを恐れ,結局は何も話せなくなってしまうというデメリットがあると思った。研修を終え,私は今までよりも英語を話すことに対する恐怖心が薄れた。これはコミュニケーションツールとしての重要性を認識し,間違えを許容するようになれたからだ。今のような文法や読解がメインの英語教育に加え,いろいろな国籍,文化を持つ人の生きた英語を学ぶことが大切になっていくと思った。
 2つ目に,タイの文化や歴史についてである。研修では午前は英語の学習,午後は主にタイの歴史や自然に触れる野外活動を行った。私が最も記憶に残ったのは水についての講義とそれに関する野外活動である。水は私たちにとって大切である。チェンマイの川は人間の行動,生活によって汚濁が目立っている。きれいな川を取り戻すためにどのような活動が行われているかを学んだ。川をきれいにするために周辺に植物を植えたり,周辺住民によって川からごみを取り除いたりする作業が行われたそうだ。この活動を通して,人と技術のどちらが欠けても課題解決にはつながらないということを実感した。世界には様々な問題があるがそれらを解決するためそのようなことを重視していきたい。
 今回の研修では上記の通り,英語のコミュニケーションツールとしての重要性とタイの文化や歴史について学んだ。これらのことを生かしてこれから取り組みたいことが2つある。まずは,英語活用能力の向上である。研修の中でもっと英語を自由に操り,コミュニケーションを楽しくとれるようになりたいという気持ちが大きくなった。読み書きはもちろん大切だが,今後は教養科目で発展的なスピーキングをメインとする授業に積極的に参加することで英語を伸ばしていきたいと思う。次に島大アンバサダーの活動についてである。スキルアップセミナーや海外からの訪問者への学校案内などに積極的に参加していきたいと思っている。


医学部 *****さん(3年生)
令和5年度 グローバルチャレンジ奨学金受給者

 最初の2日間は Cebu Province Hospital を見学させていただきました。病院見学をさせていただいた他手術の見学,分娩室,緊急救命室,入院患者さんの回診,動物咬傷の外来,入院患者の朝の病棟の回診を見学させていただき一部手伝わせていただきました。この Cebu Province Hospital には病室はもちろん個室はなく,担当医(private doctor)がいない限りは冷房のある部屋には入れず,大きな部屋に複数ベッドを置き点滴は天井からぶら下がり扇風機を持参しており,酸素マスクもなく患者の家族が手動で袋を押しながら空気を送るという方法であり,病院内にはMRI,CTはなくX線しかないなど医療設備が少なかったです。カルテは全て紙媒体であり手書きで記録を全て取っていました。このように日本の整った医療,医療施設からは程遠くその違いに驚かされました。またフィリピンには信号がほとんどなく,交通ルールも曖昧であるのに加えバイクが主流な交通手段であるため交通事故による手術がとても多いこと。フィリピンでは肉を好み野菜が少ない食生活であり味が濃いことに加え運動をするのがあまり好きではない文化であり気温が高いことから心臓発作など血管系の病気が多いこと。甘いものも多く食べるため糖尿病の患者が多いこと。子供では水や食べ物がきれいではないことから生じる下痢などによる入院が多いこと。このように日本との生活習慣,気候,環境の違いから生じる主要な疾患の違いを感じました。患者を収容する場所が足りなくなったらどうするのかと伺ったところ来る患者さんを拒むことは考えられないので最悪の事態では1つのベッドに2人の患者さんを配置するとのことでした。また狂犬病予防ワクチンの接種は高価であるため犬や猫の創傷,咬傷で外来を訪れる患者さんが多く来られており,日本では見ることのできない狂犬病の治療を見学できたのは大変興味深かったです。
 残りの3日間は Rural Health Unit という保健所のような施設を訪れました。外来患者さんの診察前のバイタルを取らせていただき血圧の患者さんが多いことに気づきました。また検査室を訪れ日本では機械で行われている検査(尿検査の分析など)を手動で見ることができ検査の原理を理解することができました。さらに,救急車に乗り複数のバランガイ(町)を訪れ,妊婦への破傷風の予防接種,新生児へのBCG,B型肝炎,麻疹,おたふくのワクチン接種,ポリオの経口投与を見学し手伝わせていただきました。日本と異なり近くの診療所で常に必要なワクチンの接種をすることはできず月一回の回診が新生児の定期接種の機会になっていることを学びました。さらに小学校を訪れ小学6年生の子どもたちにフィリピンで多い糖尿病と心臓発作などの血管系疾患をテーマとして取り上げて説明し予防策,初期症状を発表し栄養指導を行いました。Pinngan pinoy(フィリピンの栄養指導)を用いて実際にどのようなものを食べるべきか考えてもらいました。
 全体として日本とフィリピンでは年齢別人口構成が異なっているため入院患者,外来患者とともに高齢者よりも子供,中高年が多く,病院を訪れる原因となる疾患も異なっていました。またフィリピンでは医療従事者同士が患者さんの前でも空いている時間はお喋りをして笑いあい明るい雰囲気の中で仕事をしており国民性の違いに気づかされ興味深かったです。今回医学に興味を持った原点である新興国・発展途上国の医療を見学する事ができ大変有意義な時間でした。
 今回の病院見学,保健所の見学では医療設備の違いをはじめとし,日本との様々な違いに気がつきました。より多くの知識を身につけ一つの病気を患者さんに対して日本と同じ治療をしているのか,同じ薬を処方しているのかなど専門的な視野から医療の違いを観察したいです。そのため今後の大学生活では自分自身医療英語の勉強や医学の知識の強化をしたいと強く感じました。将来どのような専門性を身につけるかは決めていませんが,どのような形でも新興国・発展途上国の医療に関与したいと感じておりそのために努力していきます。